1on1ミーティングは意味がないと思っていませんか?
この記事では、近年注目されている1on1とはなにかについてを解説していきます。1on1とは部下と上司が1対1で話し合うことを意味します。
我々プロ人事は採用コンサルティング会社の中でも特にマーケティングに力を入れています。
マーケティングの一環として人事の方々が日々困っている業務に関してを調査・分析した結果、【1on1】について「意味がない」などネガティブな印象になっている事が分かりました。
実際、我々採用のプロから見ると1on1については、非常に注目を集めている人気のキーワードですが、実際には1on1が形だけのものになってしまったり、部下を一方的に責め立てるようなものになってしまいがちでネガティブなイメージを持っている人が多いようです。
今回の記事では、1on1の基本的な運用方法から、離職を防ぐための1on1のやり方など、すでに1on1を既に導入している場合にも、これから導入予定の場合にも役立つノウハウを提供します。
1:1on1とは
近年では多くの企業で導入が進んでいる「1on1」ミーティングですが、名前のとおり上司と部下が1対1で話し合うことを言います。
定期的に行われる場合がほとんどですが単発で行われる場合もこの呼び方で呼ばれます。
上司と部下の間で半強制的にコミュニケーションやフィードバックの場を作ることが念頭に置かれていますが、目的や意味合いが形骸化したり無視されてしまうことでネガティブなイメージ増えているのも確かです。
導入を検討している企業の多くが「コミュニケーションの改善(66%)」や「働きやすい環境の実現(34%)」などを成果として想定しています。
しかし、実際に導入をした後では、単に上司と部下が定期的に面談をしているようになってしまっている場合が多く、その中身は多くの場合「業績の確認」(進捗の確認、KPI確認など)に終始してしまっているのです。
大方の流れとしては、進捗報告を部下から上司に行い、それから数字が目標に届いていない場合は何故目標に届かないのか、どうしたら届くかなどを話し合って終わりで、内容として、詰めるような話になってしまう場合も多くあります。
また、1on1のほとんどは密室で行われ、上司と部下の二人のみで行われるため、後でまたは他者に中身のチェックができないブラックボックスになってしまっていることが多く、これを透明化するためにもチェックツールを使うことをおすすめしています。
各企業によって目的に幅はあってしかるべきですが、例えば離職防止やモチベーションの上昇など、進捗確認以外の効果を上げることを1on1に望むのであれば、部下の成長のために時間と位置づけ、上司としては「部下に話をしてもらう」「上司が先に自分の考えや答えを言わない」「上司に依存した関係にならないようにする」といったことに注意して行う必要があります。また、問題があれば、その解決に向かって部下を実際の行動に導くことも必要です。
1on1のメリット〜気軽な話し合いの場〜
それでは、改めて、1on1におけるメリットを整理していき、なぜ失敗してしまうのか、成功するポイントをご紹介します。
1on1を行うメリットは、上司と部下とのコミュニケーションを定期的に、半強制的に生み出すことができることです。
上司と部下で気軽な話し合いの場を持つことでコミュニケーションを改善するだけでなく、じっくり話し合うことによる関係性の改善、さらに中長期的な目標に対する振り返りとその評価を行いモチベーションの向上や、不満を吸い上げることで離職防止につなげることができます。
離職防止をさらに重視していく場合には【オンボーディング】という観点も持つべきです。
オンボーディングは主に中途入社の人が新たな職場にスムーズに溶け込め力を出せるようにサポートすることを指しますが、オンボーディングを効果的に行うことで早期退職を1~2割、最大で3割ほど下げることができます。
これにより中途採用におけるコストを大きく下げ、また中途採用の人事負荷を和らげることにもつながります。
詳しいオンボーディングの記事は他にもご紹介していますので、ぜひそちらをご覧ください。
一方でこのようなメリットを確実に生み出すためには、あくまで目の前の短期的な業績チェックは避けることが重要です。
「目先の日々の業務」と「本人の中長期的な成長」を切り分け、後者に軸を置いて話を進めていきましょう。
部下の成長や育成のためといった視点を持つことで部下も積極的に1on1に取り組むようになります。
進捗を評価して、「目標の数字に達してないじゃないか」「何をやってるんだ」など成績が悪いことを責め立てるような内容になってしまうと、一部の社員を除いてモチベーションを下げることになり、最悪の場合退職につながってしまいます。
実際に厚生労働省の調査によれば、入社後3ヶ月以内に退職した社員の理由の2割が「ノルマやプレッシャーがきつい」であります。また、介護職を例に挙げれば離職を決めた従業員の3割が自分のスキル不足を理由に挙げているなど、過度なノルマや数字にプレッシャーを感じ、最終的に自分のスキルでは不十分であると判断して退職していく流れが一般化していることがわかります。
会社によっては、「能力の無い人材はやめてもらって構わない」、あるいは「プレッシャーに耐えられない社員はいらない」という方針の会社もあると思われます。
実際にそのような方針ではない企業の場合には、1on1に力をいれ、社員の育成を行っていきましょう。
また、育成という観点から言えば、「目先の案件を取るためのアドバイスに偏りすぎないこと」が非常に重要です。
そのようなアドバイスは日常の業務内で行い、1on1では、例え今回の案件でうまくいかなかったとしても、成長して半年後同じようなものがあった際に確実に成功できるようになど長い観点で成長を促しましょう。
例えば、クロージングのトークが弱い営業マンであれば、一応先輩社員がフローを伝えるとしても、すぐに身につくものではないと割り切って、中長期的に成長できるようにどうすればいいかを考える場を1on1で作ります。
先輩のクロージングに同席などするのであれば、そこで学んだことを振り返ったり、クロージング面談の感想を共有して理解を確認したり、といった中長期的な課題にアクセスできる場所として1on1を設定しましょう。
1on1のデメリット〜時間が掛かり負担が大きい〜
一方、デメリットとして多く挙げられるものとしては「時間の無駄」や「上司の負担が大きい」といったものがあります。
1on1の目的が形骸化してしまっている状況では、部下は「目的のない話し合いには参加したくない」「面談に時間をとられたくない」と思ってしまいがちなので、上司がしっかりと「部下の成長のため」という目的を意識し、部下のために時間を使うことが必要です。
また、例えば10人の部下に30分ずつの1on1を行っている場合、上司は合計で5時間ほど時間を取られてしまいますが、時間を浪費したと感じるのは基本的には1on1自体の価値が下がってしまっているためです。
1on1をむしろ部下一人一人をしっかりマネジメントできる時間として捉え直すことができれば、部下のモチベーション上げとチームビルディングを同時に行うことができ業務効率を改善することにつながる重要な存在として感じられるようになるでしょう。
しかし、繁忙期等でどうしても時間が取れないという場合には時間を短縮するなどして対応できます。
その場合にもあくまで時間の短縮にとどめておき、5分でもやるという意識で1on1自体の習慣をなくさないことが重要です。
大手企業が導入する1on1とは?
1on1に関して最も効果を上げている有名企業としては、Yahoo! が有名でしょう。
2012年から全社で1on1を採用し、6000人の社員がいるにも関わらず原則毎週一回30分の1on1を義務付けました。かなりのコストをかけていますが、インパクトとしてはかなり大きく大きな成果を生みました。
主な導入目的は【コミュニケーションの活性化】です。
単純接触効果などの心理学アプローチに基づき、半年に一度や3ヶ月に一度飲み会などで濃密なコミニュケーションを取るよりも、毎週15分ずつでも一体一で話す方がマネジメントやチームビルディングの効果が高いと考え、頻度や、大人数より一体一で行うことなどを重視した設計のもと行われています
これは、苦手な人でもよく会ううちに好感を抱き、仕事がしやすくなる点です。
大事なのは1回にかける時間を多くするのではなく、短くても繰り返し接触する回数が重要です。繰り返し接触するほどいいものであると認識する傾向があります。
2:【1on1を成功させる考え方】部下を育成するという観点
1on1を業績の確認の場するのではなく、部下の育成にかける時間にするようにしましょう。
特に3つの軸(コーチング、ティーチング、フィードバック)に基づいた1on1をバランスよくやっていきましょう。
それでは、具体的に3つの軸(コーチング、ティーチング、フィードバック)を解説していきます。
- 【コーチング】
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コーチングでは、部下が自分で考えられるように問いを投げかけます。
答えは与えずに課題を気づかせるような質問力が求められます。
- 【ティーチング】
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ティーチングはコーチングよりもう少し積極的なもので、指導を行います。コーチングで投げかけた問いに対し部下が自分で考えても答えが出ない際などに答えを教えることを指します。
- 【フィードバック】
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フィードバックでは、その指導や気づきを踏まえて本人が行ったことに対する評価を、客観的に伝えます。
例えば、先ほどのクロージングトークが苦手な営業マンを例に取ると、コーチングにおいては、本人のクセをそれとなく指摘したり、「こういう風な話し方をしていたけれどなぜ?」あるいは「このタイミングで相手はどう感じていただろうか」など問いかけ、考えるきっかけづくりを行います。
ティーチングにおいては実際に本人がわかっていないクロージングトークを指導し、フィードバックは実際のクロージングトークやシュミレーションなどを行いその結果良かった点や悪かった点を、受注の可否に関わらず評価し面談で伝えましょう。
- 人事部で1on1を導入した結果
実際にこのような1on1を100名規模の人事部で導入した結果、採用力の強化にかなり効果がありました。
目先の仕事で忙しいことで疎かになりがちだった社員の成長への意識を見つめ直す機会ができたことにより、特に能力開発や離職率の改善などの部門で高い効果があらわれました。
「人事でもクロージング力を上げたい」「プレゼン力を上げたい」などという思いはあるものの実際に長期的な視点で取り組めていない場合が多くありましたが、1on1で大きな改善が見られました。
また、業績が良くない社員のモチベーション、マインドの改善にも効果がありました。
業績が上がらないことでモチベーションや意欲の低下が起こり、仕事に対してネガティヴになってしまう場合が多くあります。
ある程度は試練として受け入れる必要はありますが、うつやモチベーションの低下、離職につながってしまう場合もあるため、1on1において結果に結びついていないような成長や数字に現れていない改善を褒めたり実感することでモチベーションやマインドを数字に引きずられないよう保つことができます。
3:プロ人事がオススメする「離職を防ぐ1on1」とは?
それでは、次に我々プロ人事がご紹介する、「離職を防ぐ1on1」のポイントを解説していきます。
- 【部下の方が話す】
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全体の会話の総量の5:5では不十分です。6:4ないし7:3くらいの比率で部下が喋っているような状況を作りましょう。
- 【話を否定しない】
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話を直接的に否定しないことはもちろん重要ですが、否定的なアクションやリアクションをしないこと、例えば相槌をしっかり打つ、自分の意見を押し付けない、笑顔を絶やさないなども「否定しない」ことに含まれます。
1on1は1対1で基本的に個室で行われるため、面談に臨む部下はの社員は細かい点を含め注意深く上司の言動を観察していますし、そもそもの前提として否定されることを恐れている場合が多いため安心させるような行動を心がけましょう。
- 【目先の業績より中長期の成長を】
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1on1では、目先の数字の達成率にとらわれずに、中長期的な社員の成長や目標の達成にフォーカスしましょう。
進捗や日頃の業務の上での指摘は日常の業務内で指摘し、1on1では成果の達成状況などの確認は行っても良いですが、基本的には以前の1on1から継続して挑戦し続けている中長期的な目標におけるフィードバックを行いましょう。
一見数字上は下がっていても出来ている部分や、結果には出ていないものの成長した部分をきっちりと認めてあげることで部下の信頼にもつながります。
- 【思いつきでは無く、定点観測】
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中長期的な視点を忘れてしまい1on1同士の継続性が損なわれてしまうと、その場の話やその時の進捗に対してのみの場当たり的な会話になってしまい、気がついたら毎回同じ事の繰り返しなんてことになりかねません。
場当たり的に受け入れたり褒めたりすればその場の雰囲気は良くなるかもしれませんが、長期的な部下の成長にはつながりません。部下の意気込みに対しては否定しないものの、毎回同じ内容であったり口だけでできていない行動についてはきちんと批判しましょう。
- 【定期的なMTG】
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「忙しい週は15分でも取るのが大変。部下は10人いるし…」など思われる上司は多いですが、あくまで重要度は高く置いておき、リスケジュールはなるべく避けましょう。
頻繁にキャンセルになるなど、上司が1on1を軽視する姿勢を見せると、部下もそこを機敏に察知し、目標の達成を軽視しがちになります。
会社としてこの1on1を重要視しているという姿勢を見せることで、部下も成長に対して責任を持つことにつながりますし、成長を見守り続けるという意味でも、定期的に行い続けることは重要です。
4:1on1評価シート
それでは、最後に実際に使える1on1評価シートをご紹介します。
こちらはA4サイズ1枚で印刷できるように最適化していますので、ぜひこちらを活用して1on1を成功させましょう。
このよう評価シートを使用することで、ブラックボックスになりがちな1on1を明確にすることが可能となりますし、部下との有意義なコミュニケーションをとって1on1を有効的に利用していきましょう!
5:まとめ
今回は1on1について紹介いたしました。
たしかに、1on1を実施に関しては、上司に負担がかかってしまったり時間がかかりすぎてしまうなどのデメリットはありますが、それらは1on1の役割を把握せずに、文字通り無意味な作業になってしまっているというケースが多いです。
1on1は上司が部下一人ひとりをマネジメントする場であることを心がけて、本記事で解説したポイントを抑えて行えば従業員の意識の改革や離職の防止等の様々な効果を得ることができるのです。
また。1on1は必ずしも上司が行わなければならないものではなく、人材コンサルティング会社等の第三者が行うことで上司には打ち明けづらい悩みやノウハウを駆使した1on1を実施することが可能となります。
株式会社プロ人事でも1on1の代行を実施しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。